研究概要

研究テーマ

有機薄膜デバイスの高性能化・高信頼化

有機薄膜トランジスタ(Organic Thin-Film Transistor: OTFT)とは,図に示したように有機半導体から構成される電子デバイスの一つで,ゲート電極に印加する電圧によって,ソース・ドレイン電極間に流れる電流を制御します.有機材料ならではの軽量性,柔軟性,素子作製に印刷プロセスが適用可能といった特徴を有しており,将来的には,有機ELディスプレイ/照明やRF-IDタグ等の駆動用デバイスとしての応用が期待されています.また,従来の無機半導体製造プロセスと比較して,製造時のエネルギー消費を大幅に削減できると試算されており,環境負荷を抑える意味でも大変重要な研究開発分野であると言えます.

本研究室では,OTFTデバイスの構造設計と作製プロセスについて,シミュレーション及び実験の両面から検証・最適化を行うことで,OTFTデバイスの高性能化・高信頼化を実現し,実用化への道を開拓すべく,日々研究を推進しています.それと並行して,有機半導体のキャリア伝導に関する物理量(キャリア移動度やキャリア濃度など)について,新しい評価手法の提案とその応用研究も進めています.

半導体光触媒を用いた新しい水素生成デバイス

近年,水素(H2)を用いた動力源(燃料電池や水素エンジン)が再生可能なエネルギーシステムとして注目されています.本研究室では,自然界に無限に存在する水や,植物から生産可能なエタノールなどのバイオ燃料,及び太陽エネルギーを積極的に利用して,水素エネルギーという新しいクリーンエネルギー源の創成とその応用を目指しています.

その一例として,図に示したのが,バンドギャップが比較的大きい半導体材料(酸化物など)が有する光触媒機能を用いた水素発生過程と,発生した水素を精製分離する過程を一体化した,メンブレンリアクター型の小型高純度水素生成デバイスです.厚さが数十μmと大変薄い膜のですが,この膜を通じて,燃料源(水やアルコール)が光照射に伴い水素へと改質され,その水素を高純度化して即座に取り出すことができます.新しいデバイスであるため,まだ動作原理の実証が終了した段階ですが,現在,更なる性能向上を目指し,研究を進めています.